歯列矯正のリスクのひとつに歯根吸収があります。しかし「歯根吸収が起きるとどんな影響があるの?」「歯根吸収を防ぐ方法は?」とわからないこともあり、矯正治療に対して不安になる方も少なくありません。
そこで今回は歯根吸収について、詳しく解説します。歯根吸収の原因や歯根吸収が起きやすい人の特徴などについてもあわせて紹介。これから歯列矯正を始めようと考えている方は、是非この記事を参考にしてください。
なお、当院の詳しい矯正治療の流れや費用などについて知りたい方は、こちらのページをあわせて確認しておきましょう。
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目次
歯根吸収の仕組み
そもそも歯根吸収とは、何らかが原因で根の先が溶けて周りの組織に吸収される現象のことです。歯根吸収が起きると根の一部が吸収されて、歯が短くなります。
一度短くなった歯根は、元の長さに戻ることはありません。また、歯根吸収は主に以下の2つのタイプが存在します。
● 乳歯が生え変わる時に起きる生理現象の歯根吸収
● 外傷や歯列矯正が原因で起こる病的な歯根吸収
歯列矯正を行うと、必ず歯根吸収を引き起こすわけではありません。しかし歯列矯正は、歯に力をかけることで起こる顎の骨の吸収と再生。いわゆる新陳代謝を利用して、歯並びを整えていきます。現在の歯列矯正の治療法は、歯根に影響を与えるため歯根吸収が起きる可能性が高まります。
歯列矯正で歯根吸収が起きる4つの原因
矯正治療において歯根吸収が発症する主な原因は、次の4つが考えられます。
● 過度な力を加える
● 治療の長期化
● 歯の移動距離が長い
● ジグリングの影響
それぞれの原因について詳しく解説します。
過度な力を加える
矯正装置で歯に力を加えることで、少しずつ歯を移動させます。しかし、過度な力を歯にかけると歯へのダメージが大きくなり、歯根吸収を発症する可能性が高いです。ただし歯にかける力が弱いと歯が動かないため、適切な力をかける技術力が歯科医師に求められます。
治療の長期化
矯正治療で歯が動く距離は、1ヶ月で0.3〜0,5mmほどです。歯を少しずつ移動させるため、治療期間が約1〜3年と長くなるのです。矯正中に虫歯や歯周病が発症すると矯正を一時中断して歯科治療が優先され、想定していた矯正期間より長引きます。矯正治療では持続的に力をかけるので、期間が長くなるほど歯への負担となり歯根吸収を引き起こしやすいでしょう。
歯の移動方向や距離
矯正では歯の方向や位置を少しずつ変えながら、目的の位置まで動かします。歯を回転させたり角度を変えたりといった動きを何度も繰り返すと、歯根に負担がかかるため歯根吸収が起きやすくなります。また歯一つひとつがどれだけの距離を移動するのかも、歯根吸収に影響します。特に歯を並べるために抜歯をしたケースは、歯の移動距離が長くなります。
目的の位置まで歯に力をかけ続けることになるため、歯根への負担が大きく歯根吸収になりやすいです。
ジグリングの影響
ジグリングとは、歯そのものが揺れ動くこと。正式にはJiggling movement(ジグリングムーブメント)と呼びます。
ジグリングの動きは手首をグルグルと回した時に、手の部分が大きく揺さぶられるようなイメージです。たとえば歯を奥歯側に動かした後、舌がある方向(舌側)に動かすといった一連の移動が何度もあると、ジグリングの影響を受けやすくなります。
特に、ジグリングの動きは歯根部分がすり減ってしまうため、歯根吸収を引き起こす可能性が高くなります。
歯根吸収が起きやすい歯並びは?
歯根吸収が起きやすい歯並びは、以下の2つと考えられます。
● 上顎前突(出っ歯)
● 下顎前突(受け口・しゃくれ)など
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は前歯が前に突き出ている、いわゆる出っ歯の状態です。また下顎前突(かがくぜんとつ)とは、下あごが上あごより前に出ている状態のこと。
歯根吸収は複数ある歯根より、単数根である前歯で発症しやすいと言われています。前歯の歯根は1本、奥歯の歯根は2〜3本が一般的です。
出っ歯や受け口といった歯並びは、単数根であり前歯を大きく動かす必要があるため、歯根吸収しやすい傾向です。
歯根吸収が起きやすい人
歯根吸収の起きやすさや進行度合いは、もともとの歯の状態や過去の治療歴などが要因になることがあります。ここでは歯根吸収が起きやすい人の主な特徴について紹介します。
● 歯根の形態
● 根管治療・外傷の経歴
● 生活習慣や癖
歯根の形態
人それぞれ歯根の長さや形などが異なります。歯根が短かったり、尖ったりしている場合には歯列矯正で歯を動かす時に負担がかかりやすく、歯根吸収を発症しやすいでしょう。
根管治療や外傷の経歴
根管治療を行って、神経を取り除いた歯は歯根の中にある管から起きる、内部吸収という歯根吸収が起きやすいと言われています。他にも、歯をぶつけた衝撃で歯根の一部が溶けてしまうことがあります。
生活習慣や癖
日常での癖が、歯根吸収を引き起こす原因になることも少なくありません。たとえば、歯ぎしりや食いしばりでは約73キロの力が歯にかかっていることが報告されています。
過度な力が継続的に歯に加わることで歯根へのダメージとなり、歯根吸収を発症します。また歯周病はあごの骨や組織を破壊する病気で、生活習慣病のひとつです。歯周病が進行すると歯を支える骨が少なくなり、歯が不安定になります。噛み合わせのバランスが悪くなるため、一部の歯に負担がかかり歯根吸収が起きやすくなります。
上記の他にも、アレルギーやホルモン疾患などの全身疾患、あごの骨密度が低いなどが原因で、歯根吸収のリスクが高まります。
>>>参考文献
歯根吸収はどうしてリスクになるのか?
歯根吸収が起きると、根が短くなり歯の頭の部分(歯冠)が大きい状態。つまり、歯が頭でっかちの状態になります。
将来的に歯周病になった際には歯周病が重症化しやすく、早期に歯を失う可能性が高まります。ただ、歯列矯正が原因で歯根吸収が起きた場合には矯正治療が完了し、歯をその場に留める保定期間に移ると、歯根吸収は止まると言われています。
歯根吸収は装置の種類によって発症率は異なる?
矯正装置には大きく分けて、以下の2種類が存在します。
● 歯の表面にブラケットやワイヤーの装置を固定して歯を引っ張るワイヤー矯正
● 透明なマウスピースを交換しながら歯並びを整えるマウスピース型矯正
ワイヤー矯正はブラケットを固定している面に、力を加えて歯を動かしていきます。常に一方方向だけに力をかけ続けるため、歯根への負担が大きく歯根吸収を発症しやすい傾向。
いっぽう、マウスピース型矯正は歯を覆った状態で歯冠全体を押しながら歯を移動させます。一方向だけでなく歯面全体に力をかけるため、歯根への負担が少なく歯根吸収のリスクが低いことがわかっています。
ワイヤー矯正をご希望の方で、歯根吸収に関して不安なことがあれば当院にご相談ください。
歯根吸収が起きた時の対処法
歯根吸収が起きた場合には、以下のような対処法が考えられます。
経過観察
歯列矯正中に歯根吸収を発症しても、自覚症状のない軽度の状態のことが多く、治療をせず様子を見ながら治療を続けるケースがほとんどです。定期的なレントゲン撮影で歯根の状態を確認します。
根管治療
歯根吸収の原因が内部吸収の場合は、根の中を清掃する根管治療を行います。過去に精度の低い根管治療で神経を取り残していることがあると、内部吸収が発症しやすいです。精密な根管治療を行うことで、内部吸収の進行を防ぐ効果が期待できます。
抜歯
歯列矯正で抜歯になるほどの歯根吸収はほとんどありませんが、重度の歯根吸収が起きて根が極端に短くなると、抜歯の対象になる可能性が高いです。
まとめ
歯根吸収は歯列矯正で多少なりとも起きる現象で、完全に防ぐことはできません。しかし、精密検査や診断のもと適切な方法で矯正治療を行うことで、歯根吸収の発症を最小限に抑えられます。そのため、歯列矯正は豊富な実績と経験のある歯科医院を選ぶことが大切です。なお、難波矯正歯科では矯正治療を専門とした経験豊富な歯科医師のもと治療を行っていますので、安心してください。
具体的に歯根吸収に関して聞いてみたい、ワイヤー矯正したいと思っていたけど不安になってきたという方はぜひカウンセリングにてご相談ください。先生と直接お話して具体的なことを知ってみてたいと思っていたという方にはさらに次のステップの精密検査(有料)も合わせてご検討いただけますと幸いです。
些細なことでも構いません。ひとつでも不安なことがありましたら遠慮せずご相談ください。
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